第3回 建築敷地における「一団地」のメリデメ

「複数の建物を建てたいけれど、敷地境界線の制限で思うような配置ができない…」 そんな時に重要となる考え方が「一団地(いちだんち)」です。今回は、設計の実務で知っておきたい一団地の基本から、そのメリット・デメリット、そして行政との向き合い方について解説します。


1. 建築敷地における「一団地」とは?

本来、建築基準法では「1棟の建物に対して1つの敷地」という原則があります。しかし、工場や学校、大型商業施設のように、広い土地に複数の建物を一体的に配置したい場合、この原則が設計の足かせになることがあります。

そこで、複数の土地や複数の建物をまとめて「ひとつの大きな敷地」とみなす考え方が「一団地」です。

2. 一団地として計画するメリット

一団地として扱うことで、個別の敷地制限に縛られない柔軟な設計が可能になります。

  • 配置計画の自由度向上: 建物間の距離や配置を敷地全体で最適化できる。
  • 接道条件の集約: 個別の建物が道路に接していなくても、敷地全体で接道条件を満たせばOK。
  • 壁面後退の緩和: 隣地境界線がなくなるため、配置の制約が減る。
  • インフラの効率化: 上下水道を一本化でき、コストダウンやメンテナンス性の向上が図れる。
  • 条例対応の効率化: 福祉まちづくり条例等の基準を、敷地全体で合理的にクリアできる。
  • 将来的な分割指導の回避: 分割時に求められるフェンス(往来遮断)の設置指導を受けずに済む。

3. デメリットと注意点

メリットが多い反面、注意すべき点もあります。

  • 緑地面積の計算: 緑地規制は「敷地面積に対する割合」で決まります。一団地にすることで敷地面積が大きくなり、結果として求められる緑地面積が増えたり、逆に規制の対象外にできないケースも出てきます。

4. なぜ行政や検査機関は「一団地」の認定に慎重なのか?

実務では、行政側がすんなりと認めてくれないケースも少なくありません。その理由は主に3つあります。

  1. 法規判定の明確化: どこまでが判定単位なのかを曖昧にできないため。
  2. 安全(防災・避難)の担保: 避難経路や延焼防止の観点から、一体化によるリスクを警戒するため。
  3. 公平性の維持: 特定の計画だけを優遇するわけにはいかないという公的立場。

5. 「一団地」と「86条申請」の違い

よく混同されますが、役割が異なります。

  • 一団地: 複数の建物をひとつの敷地として扱う「考え方・状態」。
  • 86条申請(一団地認定): その一団地の考え方を、法的に例外として認めさせるための「手続き」。

6. 行政にスムーズに認めてもらうためのポイント

今後、86条申請を円滑に進め、一団地としての見解を得るためには、以下の3点が不可欠です。

  1. 建物所有者の同一性: 所有者が同一であることは、管理責任の所在を明確にする上で非常に重要です。
  2. 将来の分割対策: 「将来、勝手に敷地を分割しない」という担保(確約や構造上の不可分性)が求められます。
  3. インフラの統合: 水道や電気などの引き込みを一本化し、物理的にも「一体の施設」であることを示す必要があります。

【まとめ】

ショッピングモール等の大型プロジェクトにおいて、一団地の考え方は非常に有効な武器になります。 ただし、最終的には行政判断に左右される部分が大きいため、設計者はそのメリット・デメリットを深く理解しておく必要があります。

単なる「法規逃れ」ではなく、「モールを利用する人にとって、一体的に計画することでいかに利便性が上がるか」。その視点を持ち、さらなるメリットを追求していくことが、良い設計への近道と言えるでしょう。

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